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「だってそんな、そんな滅茶苦茶なこと…」
扉の向こうから聞こえる声は震えていた。泣いているのかもしれない。
「私のことなんて何も知らないから貴方はっ…!」
「ああ、知らない!貴女の過去は何一つわからない!」
それでもシオンは叫び続けた。
腹の底に力を込めて、全力で、自分の気持ちがジャーミアの閉ざした心に届くように。
「それでも今の貴女を知っている!今の美しくて、穏やかで、心優しい君を――!」
ジャーミアが好きだ。大好きだ。守りたい。
「辛いのなら何も話さなくていい、俺の事を拒んでもいい!それでも俺は待っているから!貴女が俺の想いを信じてくれるまで、ずっと待っているから!だから、その時は…」
例え傍で寄り添うことが出来なくても心の底からの気持ちを伝えたい。
シオンはすうと息を吸って叫んだ。
「俺と一緒になってくれ!!」
息が止まるような、どこかでそんな音が聞こえた。
その場がしんと静まり返り、荒い呼吸だけが響いた。冷たい扉に額を押し付けてシオンはそっと語りかけた。
「返事をくれなんて言わない…だが俺はこれから毎日言いに来るから。貴女が嫌がってもここに来る」
それを聞きながら、ジャーミアは扉に縋りついて声を押し殺しながら泣いていた。
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