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この扉を一枚隔てた向こうにあの人がいる。それだけで触れている手が熱くなる。
会いたい。開ければ、会えるのに。
「っ…私……、私…」
私だって。
かつ、と聞こえた足音に胸がざわついた。その音はどんどんと扉から遠ざかっていく。
行かないで。
思わず伸びた手が扉の取っ手を掴んだ。
「っ…」
体温を奪うような金属の冷たさにどくっと心臓が脈打って体が震える。
開けるのが怖い。
ジャーミアはぎゅうと取っ手を握りしめて目をきつく閉じた。
その時、彼女の手を支えるように誰かの手が包んだ。
「怖くない」
ジャーミアの背を押す声。見上げれば群青色の瞳と目が合った。
「ハイ、ド…」
「大丈夫だ」
その言葉にジャーミアは頷いた。
「有難う、ハイド」
私は変わりたい。きっと、大丈夫だから。
ジャーミアは力強く扉を開け放ち、一歩を踏み出した。
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