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「待って!!」
背後から追いかけてくる声に、シオンの足が止まった。
ばっと振り返れば、短い髪を乱れさせて裸足のままこちらに駆けてくる人影。
それだけで胸に熱いものが溢れ出した。
立ち止まるシオンから少し離れた場所で、ジャーミアは足を止めた。
「シオン様…私は…」
膝に手を付いたまま、はあと息を吐く。掌に滲み出る冷や汗は覚悟と一緒に強く握りしめた。
「私は…身分のない奴隷の女です。大勢の人を危険に晒し人を殺めました。そして、この身は穢されています」
「……」
「貴方の事も傷つけました、これからも沢山傷つけるかもしれない。それでも私っ…」
ジャーミアは顔を上げて叫んだ。
「貴方のことを愛したい…っ!」
一歩、シオンへと歩み寄る。
「だから、シオン様…っ」
私を愛してくれますか…――?
聞こうとした言葉はこぼれ落ちた涙と共に空気へと溶けた。
「愛してる」
そんな彼女の言葉に被せるように返って来た言葉。
「その過去を歩んできた今の貴女を愛してる」
自分を見つめるシオンの銀髪が風に揺れている。
いつか刃のようだと思ったそれは、今のジャーミアには自分を照らす優しい光に見えた。
その光が、どうしようもなく愛しくて。
「一緒に…なってくれるか」
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