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「…は、い…」
差し出された腕の中にジャーミアは身一つで飛び込んだ。
シオンはジャーミアの傷ついた心ごと、全てを両腕の中に抱き込んだ。
「共に居られる時間は限られているかもしれない」
シオンは何れはプリムラと共に国に帰らなくてはならない。ずっと一緒にいられるわけではないことはわかっている。
それでも今だけはこうしてお互いの鼓動を感じていたい。
ジャーミアが長い睫毛を濡らすと、シオンの手が彼女の頬に触れた。
「それでも。例え離れていようと、貴女へ永劫の愛を誓う」
此方を見つめる薄紫色の瞳。
暫しお互いの顔を見つめ合うと、シオンが唇を近づけた。ジャーミアは今度こそそれを拒まなかった。
受け入れた唇から触れる体温は全身を温かく染め上げて、確かに幸福を感じた。
「貴方が…大好き」
シオンの肩口に頭を乗せ呟いたジャーミアは、その肩越しに見えた少年にはっとした。
「ムスタファ様…」
ジャーミアを抱くシオンの腕に少し力が入る。
ムスタファは何も言わず二人に歩み寄ってきた。
「あの、私…」
「もういいんだ、ジャーミア」
何かを言いかけた彼女に対しムスタファは首を振った。
その声はとても優しいものだった。
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