第三章:踏み出す愛

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「…は、い…」 差し出された腕の中にジャーミアは身一つで飛び込んだ。 シオンはジャーミアの傷ついた心ごと、全てを両腕の中に抱き込んだ。 「共に居られる時間は限られているかもしれない」 シオンは何れはプリムラと共に国に帰らなくてはならない。ずっと一緒にいられるわけではないことはわかっている。 それでも今だけはこうしてお互いの鼓動を感じていたい。 ジャーミアが長い睫毛を濡らすと、シオンの手が彼女の頬に触れた。 「それでも。例え離れていようと、貴女へ永劫の愛を誓う」 此方を見つめる薄紫色の瞳。 暫しお互いの顔を見つめ合うと、シオンが唇を近づけた。ジャーミアは今度こそそれを拒まなかった。 受け入れた唇から触れる体温は全身を温かく染め上げて、確かに幸福を感じた。 「貴方が…大好き」 シオンの肩口に頭を乗せ呟いたジャーミアは、その肩越しに見えた少年にはっとした。 「ムスタファ様…」 ジャーミアを抱くシオンの腕に少し力が入る。 ムスタファは何も言わず二人に歩み寄ってきた。 「あの、私…」 「もういいんだ、ジャーミア」 何かを言いかけた彼女に対しムスタファは首を振った。 その声はとても優しいものだった。     
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