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シオンは今更ながらムスタファに焚き付けられたのだと悟り、ばつが悪くなった。
「あの、ところでムスタファ様…そのお顔は一体どうなされたの?」
「え?」
謝罪をしようとした矢先にジャーミアがムスタファの顔の傷について触れてしまった。
ムスタファ本人は気にした様子もなく、むしろなんの事だ?とでも言いそうな表情をしていた。
ぎくっとしたシオンは慌て、口を必死に動かした。何事も謝るのは早い方がいい。プリムラに教えて貰った教訓だ。
「あ、い、いやこれは…誠に申し訳御座いませんムスタファ様!俺が…っ!」
「俺が?」
シオンがそれ以上言葉を発することは無かった。
血を凍らせるような冷たく低い声がシオンの心臓を握り潰したからだ。
ジャーミアから離した両腕を宙にあげたシオンは冷や汗をだらだらと零した。
背後に、鬼がいる。
「なあ、シオンよ」
乾いた口がごくりと空気を飲み込んだ。
顎に伸びてきた指が、固まったシオンの首をゆっくり背後へと向けさせる。
「俺が……何だ?」
殺される。
シオンはハイドの笑顔を見ながらそう確信した。
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