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「…何してんのお兄様」
その日は一際暑い日になった。
兵達に案内をされ応接間に現れたプリムラは、部屋に控えていた実兄を見るやいなやぱちくりと目を瞬かせた。
久方ぶりに妹の顔を見たハイドは座ったまま長い足を組み直した。
「椅子に座ってるだけだが?」
「随分見知った奴に似た椅子だこと」
「この度は誠に申し訳御座いませんでした…」
「あら、なんか言ってる」
プリムラはハイドの下で四つん這いになっている椅子の前に屈んだ。
一体いつからこの体勢なのだろうか。心なしか顔色が悪い。
しかしプリムラは容赦なくその髪をぐしゃぐしゃと撫で回して、頬を強く抓りあげた。
「この椅子、私にも随分と口答えしたのよね」
「ひ、姫…申し訳御座いません…」
「もっと心込めなさいよ」
「申し訳御座いませんでした…」
「声が小せえな」
「申し訳…」
「もうやめてあげてください!!」
見ていられない。
応接間の中にいる数人の男女の中で一番最初に音を上げたのはムスタファだった。
あの一件から数日間ハイドの機嫌はすこぶる悪く、仕置きと言い張りシオンをこうして手酷く扱っている。
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