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何度ムスタファやオリヴァーが助け舟を出そうとしても俺の個人的な気分の問題だ、と横暴な理論を振りかざす。もはやオリヴァーは悟ってしまったのか何も言わなくなってしまった。
しかしムスタファは今もなお椅子代わりにされているシオンが不憫でならない。
「何度も言っています、俺が自分から焚きつけたのであってシオン殿は悪くありません!これ以上続けるのなら俺も怒りますよ!」
「…仕方ねえな」
傍若無人なハイドだが旦那にだけは妙に甘い。惚れた弱みだ。
ハイドは渋々シオンの背から腰をどかした。
ようやく人間椅子から脱却出来たシオンはがくりと倒れ込む。自分よりも体格のいい男の体重をずっと支えるのは地獄の苦行なのだと思い知った。
項垂れたシオンの額をプリムラが指で弾いた。
「ムスタファ様が寛大な方でよかったわね。でもお前の不敬は死罪並だったことを肝に銘じときなさい」
「はい…」
「で、改まって話ってなんだよ」
ムスタファの隣に腰を下ろしたハイド。その二人の向かいにファティマがクッションを用意し、プリムラはシオンの手を借りながら腰を下ろした。
「まあ、ムスタファ様。お話していませんでしたの」
「全て決まってからの方が宜しいかと思いまして」
「確かに、それもそうですわね」
勿体ぶるなとでも言いたげなハイドの面前に、プリムラは一つの書状を見せつけた。
「お話とはこれですわ。ジャーミア、私の隣にいらっしゃいな」
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