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「え、は、はい」
突然名指しをされたジャーミアは立ち上がるとおずおずとプリムラの傍に控える。得意げな笑みで此方を見るプリムラの手元の書状を見てジャーミアは驚愕した。
「それはもしかして…」
「そうよ。アイシャ妃様の花押」
書状に書かれた文字の下にあったものは、後宮の女帝アイシャの荘厳な空気すら匂わせる花王だった。
「どうして…」
「貴女の事を話したら色々と良くしてくださったわ。私が即位した暁には友好国の証として此方の国の人間を一人、我が国に寄贈して頂けるそうよ」
「寄贈?」
「貴女のことです」
「え…」
ムスタファの言葉にジャーミアは顔を上げた。
寄贈、つまりはエスタシオ王国に遣わされ向こうの国で暮らすということだ。
ジャーミアは胸を押さえてシオンに顔を向けた。シオンもどこか驚いた雰囲気でジャーミアを見ていた。
「ムスタファ様と御相談してね、アイシャ妃様にお目通り頂けるようにもして下さって」
謁見の際は吐きそうなほど緊張したわと言うプリムラ。その割には涼しい顔をしている。
「エスタシオにいらっしゃいな。貴女は私の専属侍女になるの、語学の教育係も兼ねてね」
「そ、そんな」
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