第三章:踏み出す愛

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ジャーミアは頭に付けた面紗が落ちるのではと思う程に首を振った。 「嬉しいです…!」 「良かった、貴女は記念すべき自由な女一人目よ。すぐ即位してシオンと結婚させてやるんだから待ってらっしゃい」 「…姫は、どうしてそんなにも」 シオンがぽつりと言葉をこぼした。 情緒が不安定で色々と問題を起こしてしまったが、プリムラは最後までシオンとジャーミアに真摯に向き合っていた。 必死に自分を奮い立たせようとした彼女の姿は今も目に焼き付いている。 「いくらでも向き合うわよ。私はお前達を守れるような国王になりたいの。だからシオンもジャーミアも安心して私を頼ればいいわ」 言い切る彼女の顔には確かな覚悟が宿っていた。 オリヴァーが腕を組んで感嘆の声を洩らした。 「あの我が儘お嬢がこんなにも凛々しいお顔をなさるようになるとは」 「喧嘩売ってんなら買うわよクソオヤジ」 「おい。プリムローズ」 「何よ?」 また何か嫌味かしら、とプリムラは面倒くさそうにハイドの呼びかけに顔を向けた。 しかし彼女に届いたものは嫌味ではなく、頭にぽんと乗せられた手だった。 ハイドは妹の頭を撫でると優しく、しかし力強く言った。 「国のことは頼んだぞ」 一瞬面食らったプリムラは、やがて満面の笑顔を浮かべ頷いた。 「任しときなさい!」
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