終章:君を想う

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「…貴女が、まだムスタファ様を好きだったならばどうしようかと」 ジャーミアは、まあと声を上げた。 「それはどなたからお聞きしましたの」 「いや…貴女を奴隷商から助けた時に、気付いた」 「そうですか…」 ジャーミアは少し黙った後、シオンの手を掴み自分の左胸に押し当てた。掌にぶつかる柔らかい感触。 「なっ!?」 シオンは狼狽え、顔どころか全身を朱に染め上げた。 「わかりますか」 「お、大きさか…っ!?よ、よくは分からんが八朔くらいはあるかと…」 「えっ!?そ、そうじゃなくて!」 素っ頓狂なシオンの返答にジャーミアまで真っ赤になる。それでも彼女はシオンの手を離さずに声を大きくさせた。 「心臓の音が違うんです!」 「し、心臓?」 駄目だとわかっていても掌に意識が集中する。 ばくばくと聞こえるこの音は、自分のものではなく彼女の胸から伝わるものだと気が付いた。 「ムスタファ様といる時は…温かかったけれど、こんなにうるさく速く鳴ることはなかったんです。だから私にはもうシオン様しか考えられません」 「そ、そう、か」 シオンは首を何度も縦に動かしてぎこちなく頷いた。これ以上触っていたらおかしくなりそうだ。     
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