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加えてとんでもない助平男のような発言をしてしまったのだから死にたくなる。ハイドに知られでもしたら一生笑いものにされるだろう。
シオンがばっと手を引き離すとジャーミアが形のいい眉を下げた。
「あ」
「え?」
「あの…ごめんなさい、もう少しだけ繋いでいたくて…」
駄目ですか。そう聞かれ、シオンは暫し固まった後ゆっくりと空を仰ぎ見た。
「(可愛い)」
こんなにも可愛い人が自分の恋人でいいのだろうか、といっそ不安にすらなってくる。
「…駄目なわけない」
そうしてジャーミアの手を握り、彼女の体を抱き寄せる。
こうして腕の中にジャーミアがいることがこの上ない奇跡に思えた。
「…必ず、また迎えに来る…。どうか待っていてほしい」
「はい」
「共にエスタシオに行こう」
シオンはジャーミアの繊手にそっと口付けを落とした。
「…君をいつも想っている」
「私もです」
握られた手が熱い。
シオンの鼓動が伝わってくる。なんて幸せな鼓動だろう。
ジャーミアは赤らんだ頬で微笑むと、そっと彼の胸元に寄り添った。
「…あなた」
びしり。
何かが固まるような音が聞こえた気がした。
何も返さないシオンを不思議に思ったジャーミアが、彼の顔を見上げる。
石化したシオンの体が傾いた、と、思った瞬間。
「シオン様!?」
ばしゃーんっととてつもなく大きな水音と飛沫を立たせながらシオンは泉の中へ落ちた。
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