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「良かった…」
体に月の障りが訪れた。
ということはこの体は男の精を受け入れなかったということになる。
良かった、自分はあの男達の子を孕まなかった。
ジャーミアは己の体を抱き締め人知れず涙を零した。
自分を好き勝手弄んだ男の子供なんて絶対に産みたくない。
「…っう、」
吐き気を催したジャーミアは思わず口元を手で押さえた。
あの事件は既に過ぎ去った過去で、相応の罰もこの身に受けた。
しかし、体も心もあの時の事を未だに色濃く覚えてしまっている。酷い記憶はこうして度々蘇り彼女を襲った。
それでも思い出さないようにその辛さをかみ砕きながら、ジャーミアはこの記憶が時間と共に薄れていくことを願っていた。
◆
侍女部屋から出て部屋に入れば、ジャーミアの主であるハイドランジアは既に起床をしていた。
「おはようハイド、やだ、私寝過ごしたのね。ごめんなさい」
「いや、ムスタファが礼拝をしに祈祷部屋に行くというので俺も早く起きただけだ。気にするな」
ジャーミアはクッションに悠々と座るハイドの傍に歩み寄った。
彼の前にはムスタファ付きの侍女であるファティマが持ってきたのであろう朝食が、小さな丸い机の上にほぼ手つかずで置いてあった。相変わらず朝は食が細い。
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