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ジャーミアは一瞬ぎくりとしたがすぐに平静を装い、盆を抱え直した。
「あら…そうかしら?」
「体調が優れないのなら言え、具合の悪い女を使い走りにするほど困ってはない。あのおっさんを荒く使えばいいしな」
「荒く使われる覚えはないんですが」
ハイドの側仕えであるオリヴァーが表情を変えないまま間髪入れずに文句を言った。
ジャーミアはそんな二人のやり取りにくすりと笑いを零して、首を振った。
「大丈夫、平気よ」
気心が知れてきた仲とはいえ流石に男に月の障りだなんて言えるわけもない。
それに今日は大事な客人の来る日だ。
「今日は貴方の妹君がいらっしゃるんだもの、休んでいられないわ」
「あいつに会ったら余計に具合を悪くするかもしれんぞ」
ハイドの悪態にジャーミアはまあひどい、といつものように穏やかに笑った。
その時扉を叩く音が聞こえ、ファティマを連れたムスタファが姿を現した。
「ハイド、そろそろ姫を迎える支度をなさってください」
「ああ…正直面倒くせえが仕方ねえ」
「貴方に代わり王位を継ぐため、我が国に滞在し勉強をなさりたいだなんて立派な妹君では御座いませんか」
ハイドは鼻を鳴らして立ち上がった。
「ジャーミア、それを片したら着替えを頼む」
「はい、すぐに」
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