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「わざわざ私めの為に第三王子殿下自らのお出迎え、光栄至極に存じます。こうしてお言葉を交わすのは婚礼の日以来ですね。此度は私の我儘な要望を快く受け入れて下さり、王族の皆様方には心よりの感謝を致しております。兵達に御挨拶と謝意の品を送らせておりますので後程どうぞお受け取りくださいませ」
「有難く頂きます。この国のもてなしが姫君にとって素晴らしいもので御座いますように。貴女様の御身に平安と祝福あれ」
「おい」
二人のなだらかな挨拶の途中に低い声が鋭く割って入った。
ムスタファがぎょっとして肩を跳ねさせた。
「ハ、ハイド」
「もういいだろう」
まさか挨拶中に割り込んでくるとは思ってもみなかった。
ハイドは不機嫌そうに顔を顰め、ムスタファの腕を掴んでプリムラから引き離すように立ち上がらせた。
「いけません、御挨拶はきちんとしなくては。エスタシオ王国では貴婦人の手を握ったまま挨拶の言葉を交わすのでしょう?」
「教えなきゃよかったと心底後悔しているところだ」
プリムラは片手に持った扇をぱっと広げ口元を隠しながらわざとらしく声たかだかに言った。
「まあ、お兄様ったら。可愛くもない嫉妬はよして下さいませ、気色が悪いです」
「お前が俺に挑発的な目線を送らなければ我慢できていたんだがな」
ハイドがそう言えばプリムラはにっこりと可憐な笑みを浮かべた。
「私のせいだと仰るのですか」
ハイドはふっと鼻で笑い、目を細めた。
「お前でなければ何なのだろうな」
「あ、あの」
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