序章◆過去の鎖

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序章◆過去の鎖

下卑た笑い声。布の引き裂かれる音。体に伸びる男の手。 夢の中で自分は泣き叫んでいた。泣き声はどこにも届くことは無く暗闇の中に飲み込まれる。 やがて男は恐ろしい凶器を突きつけた。 四肢を押さえつけられ、体の中を突き刺される痛みにただ恐怖し悲鳴をあげた。 ――嫌だ、誰か助けて。 「は…っ…」 ジャーミアは寝台の上で目を覚ました。 横たわったまま窓を見上げれば外は既に夜明けの朝日を待ち詫びるように白んでいた。 「夢、ね…」 誰に言うでもなく一人呟いた彼女は大きな息をついて体から力を抜いた。 ふー…っと息を吐く度に体が重たく柔らかく寝台に沈んでいった。 嫌な汗を全身に纏わせながら彼女は寝返りを打った。 「酷い寝覚め…」 清々しい朝の空気に相反するように、彼女の気分はどんどんと悪くなっていった。 体が重い。もう少し惰眠を貪りたいところだが、そろそろ起きなくてはいけない。 そう思い気怠い上半身を起こした時、ジャーミアは自分の股ぐらに違和感を感じた。 「!」 跳ねるように起き上がって下穿きを確認すると、そこには真新しい赤色の液体が付着していた。 「あ…」 その意味を理解するとジャーミアは力が抜けたようにへたり込んで安堵の涙を浮かべた。     
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