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第三章:踏み出す愛
「…そう、なら命に別状はないのね」
「はい」
翌日。図書室にて、プリムラは昨日の経緯を聞いていた。
シオンは片膝をついて絨毯の上に座り込むプリムラに謝罪をした。
「申し訳御座いませんでした。姫様のお立場も顧みず…勝手な真似をしてしまい」
「黙りなさい」
謝罪の言葉を切るようにプリムラは鋭い声を発した。
「私の立場を案じて女一人守れないような騎士ならいらないわ」
それに、今回のことを言い出したのは他でもない私だもの。
その言葉は心の中でだけに留めプリムラは本を閉じた。
今日ジャーミアはここへは来ていない。それだけで図書館の中は妙にがらんとしているように感じた。
怪我は大したことはないというが、シオンの様子からして彼女の精神状態が芳しくないのはわかっていた。恐らく侍女部屋で床に臥せっているのかもしれない。
見舞いに行きたくとも、王族の居という紅玉の宮に入ることが出来ない己の身が悔やまれた。
「話は出来たの」
いきなり本題に斬り込んだがシオンは顔色一つ変えなかった。
跪いた状態から立ち上がるその姿はいつもの彼の姿だった。それでもごっそりと気力の抜け落ちた抜け殻のように見える。
何かがあったのは間違いないのだ。
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