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終章:君を想う
何を話そう。
シオンは回廊を歩きながら考えた。隣をちらりと見れば、ジャーミアが寄り添う様に歩いている。
折角なんだからしっかり仲深めなさいよ、とプリムラに半ば強引に応接間を締め出された二人は特に当てもなく辺りを散歩していた。
此処に来るまで気が付かなかったが、応接間のある場所は以前シオンがムスタファを殴りつけたあの回廊のすぐ傍だった。
「(彼女はまだ…ムスタファ様に情があったり、しないよな…)」
ジャーミアとは相思相愛…の、筈だ。
なのにこの場に来て払拭されたと思っていた不安が再び鎌首をもたげてくる。
「(どうしよう、聞くか?いやでも、聞けば面倒くさい男と思われるのでは)」
ああでもない、こうでもないと頭の中でぐるぐると思考が回っていく。
これでは前と変わらない。
「(俺は成長していなさすぎでは…!?)」
体に落雷が走るような衝撃と共にシオンは真顔のまま愕然とした。
「シオン様、前が」
「っ!!」
「きゃ!」
その時、がつんという強い音と共に目の前に閃光が飛び散った。ジャーミアの小さな悲鳴が聞こえ額がずきずきと痛みをあげる。
目の前には、ずんと佇む雪花石膏の柱。
「……」
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