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第二章◆傷ついた恋
「はあ…」
図書館に落ちる溜息。
本日何度目かのそれを聞いた時、ぶち、とプリムラの中で何かが切れた。
大きく絨毯を叩きつけて立ち上がると、自身が今まで使っていたクッションを件の溜息の元に思い切り投げつけた。
「うるっっっさい!!」
飛んできたクッションを難なく受け止めたシオンはプリムラに目を向けた。
「一日に何回溜息つけば気が済むの!!集中力きれちゃうじゃない!」
長い金髪を振り乱し、柳眉を逆立て激昂する姿はまるで言い伝えの魔女のようだ。
しかしこんなことを今の彼女に言えば確実に日の目を見れなくなるだろう。
シオンはクッションを絨毯の上に戻して大人しく謝った。
「申し訳御座いません」
「もう、何なのよ!お前の取り柄は静かなところでしょう!ここ数日気の抜けた顔で溜息ばっかりでいい加減気が触れそう!」
力なく項垂れたシオンに対しプリムラは行き場のない苛立ちをぎりぎりと噛み締めた。
本を置いて柘榴色の長衣を翻した彼女は貴婦人らしからぬ大股で歩き出した。
「もういいわ、来なさい!」
「あの、どちらに」
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