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第一章◆王女の来訪
「御機嫌よう、ムスタファ第三王子殿下。並びにハイドランジアお兄様」
腰辺りまで真っ直ぐ伸びた金糸のような髪が柔らかく靡いた。
陶器かと見紛うほど白い滑らかな肌に色づいた唇。濃い桃色をした瞳は、兄であるハイドとよく似た切れ長をしており凛とした美しさがある。
「遠路遥々ようこそお越しくださいました、プリムローズ姫」
エスタシオ王国の第一王女、プリムローズ・ペトラ・エスタシオが来訪したのは日が高くなり始めた頃だった。
客人を迎える大広間にて第三王子であるムスタファ、その妻で彼女の兄のハイド。他多数の侍女や兵達が彼女を出迎えた。
胸元に拳を当て頭を下げたムスタファに対し、プリムラはドレスの裾を持ち膝を曲げて挨拶を返した。
そうしてムスタファは彼女の前に跪き、白い繊手を両手で取ると指先に唇を落とした。これはエスタシオ王国の挨拶の流儀だ。
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