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お題『菜の花』
するりと襖を開け、畳の上を白い靴下で、小さは歩幅の私は歩く。大会が近かった。私はこの教室で生け花を学んでいる。この教室の中でも私は上級者用の高頻度で稽古を積むようなとこに所属し、その中でも上手な方だった。
ある日の事だ。私ともう1人の男の子は先生に残るように指示された。彼は私には特別な人だった。なんせ、私も彼も菜の花を得意としている。彼の方が断然上手で才能もあった。それに彼には私よりも努力する人で、私はそんな彼を尊敬し、またライバル視していた。
「君たちふたりを残したのは、今年のコンクールに出場して欲しいからです」
そう先生は言った。先生は私に厳しい目をしたと思えば、彼を向くなり顔が緩む。私はそんなに期待されてないんだなと、話を軽く聞いていた。実際私は上手くても彼に並ぶほどではない。もっと上手い人は沢山いる。せいぜい引き立て役なんだなと思う他なかった。
すると先生は私をきつく叱った。
「こらぁぁぁ!!ちゃんと聞かんか!!!」
いつものようなきつい声色に慣れた私ですら引いてしまうような恐ろしい声だった。
彼にだけ特別扱いなんだと思うといい加減腹が立ち、彼をこっそり睨み、絶対に負かすと言う念を送った。
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