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そんな私は悩みを抱えたままその日を迎えた。
作品を提出する期限だ。その日は本来は休みなのに、先生に無理を言って教室を開けてもらった。けど上手くいかなかった。すると先生は言った。
「やりたいことをすればいい。」
すると私の中で奥底に決めていたものが再び眠から覚めようとした。
「それは私欲でもいいんですか?」
「それが煩悩ならもちろんダメだ。でもソナタのしたいことは、前に進もうとすることだ。」
そう言い残し先生は去った。
ならこの気持ちをぶつけようと、私は生けた。
展覧会当日、私と彼と先生は横並びに結果を見ていた。私は彼を見た。これで勝ったら、この気持ちを彼に伝えようと決めるため。
驚くべきことが起きたのだ。彼の作品が決勝に残らず、残ったのは私と、また誰かの作品だった。
今度は先生の方を向いた。その苦渋の表層から察した。先生は私を成長させるために彼と競わせたのだなと。
私は優勝した。
夕方のある程度人の静まったそこで、彼を呼び止めたのは私だけ。たわいもない話から少しずつ雰囲気を作ろうとした。けど先手を打ったのは彼だ。
「この負けは無駄にしない。おれはこれからこの道に精進したいと思うんだ。学問とか恋愛とか、他の道を捨ててね。」
どうやら私の気持ちが入るすきはないみたいだ。そこに入る勇気はなかった。そのまま私は彼と別れた後、ただ立ち尽くした。優勝したって言うのに、どうして心は泣いてるんだろ?私は失恋と言うものを経験した。
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