セピア色の化物

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 再びここへ来る約束をこじつけられたような気がしたが、特に悪い気もしない。撮ってもらった写真がどんな風に出来上がるのか楽しみにしていよう。  そう、楽しみにしていたのだ。 「ごめんください」  写真館の入口から声を掛けるが、中から返事が来ることはなく、ただ静寂な空気だけが漂っていた。  自分からこの日、時間に、と都合をつけておきながら留守とは、些かマナーに欠けるのではないだろうか。  帰ろうかとも思ったのだが、行き違いになる可能性もあるし写真の仕上がりも気になる。家主が来るまで少し待とう、と店の中へと入った。  何だか先週来た時より寂れたような気がする。店内もやや埃っぽく、幽霊の一人でも出そうだ。 「……幽霊じゃ、ないよな?」  一週間前ここで出逢ったあの男は、既に存在しない人物だったのでは、と思い始めるくらいには、店の中にもこの建物内にも人のいた形跡がない。  恐る恐る隣室へと足を踏み入れた。そこには先週と変わらぬスクリーンと椅子があり、箱型の写真機がひっそりと佇んでいた。変わりのないその光景に内心ほっとしつつ、辺りを見回した。  スタジオの端の作業台に写真が一枚あった。  手に取って見るとそこには、──写真機を抱えた俺の姿が写っていた。 「何で……」  写真の裏には一言、『少年へ』と書き記されていた。     
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