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「あ、アーウィーっていうのはね、俺の名前。海外だと母音の続く音って、発音難しいらしくて。あっちでは誰も、俺のことアオイって呼べなくてね。マリセラにもアーウィーって呼ばれてたから、もうそれでいいかなって。スタッフとして活動してるときは、その名前でやってたんだ」
蒼生君の苗字は、長くて読みにくい。彼が新人で入ったとき、部署の人は私以外に誰も、その珍しい苗字を読めなかった。だからオフィスでも呼びやすい下の名前で呼ばれているのだが、海外ではその名前さえもちゃんと呼んでもらえないらしい。
会社では3年後輩だが、1年浪人して大学を卒業した蒼生君は、短大卒の私と同じ歳だ。
私が高校を卒業し、何も身に付かなかった短大の講義とサークルとバイトに明け暮れていた間に、蒼生君は、貧しい子どもたちに出会った。
マリセラの死をきっかけに、フィリピンの貧困と援助を真剣に考え、ボランティア団体を立ち上げた。
ノリが軽く、仕事が甘く、困った問題児だと思っていたけれど。
私の知らない、いろんなものを見てきた人だったんだ……
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