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「あ、これ美味しいよ。アボカドと海老のサラダ」
黙り込んだ私に、蒼生君がサラダを勧めてくる。取り皿によそってくれたので一口食べると、プリプリの海老にアボカドとマヨネーズがからんで、美味しかった。
「飲みもの、次どうする?」
そう言われ、ドリンクメニューを差し出された。見ると、私のカシスオレンジは残り少ない。蒼生君のハイボールの方が減っているのに、私は他人の飲みものにまで気が回らなかった。
「…… あのさ、」
海老を飲み込んでから、私は切り出した。
「真面目な話、私、蒼生君ってすごくもったいないことしてると思うの。頭いいんだし、よく気がつくし、愛想もいいんだから、会社でも、もっとちゃんとしたらいいのに……」
蒼生君は、一瞬目を丸くした。そして、にっこりと笑った。
「ハッピーに生きるって、決めたから」
彼が長い指でテーブルに置いたスマホにとん、と触れると、マリセラの笑顔が映し出された。
「日本人てさ、豊かなはずなのに幸福度が低いって、知ってる?おしゃれして旅行して、お腹いっぱい食べれる生活してる人がほとんどなのに、幸せだなぁって感じてる人、あんまりいないんだって。うちみたいないい会社に入ってもさ、みんな疲れた顔して満員電車に揺られて、つまんなそうな顔でため息ついて仕事してんの。そっちの方がもったいないと思わない?」
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