マリセラ

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私はドキッとした。私もそんな、「つまんなそうな顔」をした1人だ。 「俺さ、マリセラと約束したんだよね。せっかくもらった命だから、ハッピーに生きるよって。だから行きたい飲み会には行くし、したくない残業はしない。仲良くなりたい子には声かけるし、好きな服着て食べたいもの食べて楽しく生きることにしたんだ」 言葉が出なかった。恵まれた環境にいながら、いつも不満そうな顔で仕事をしている私は、蒼生君の目にどう映っていたのだろう。 私は、中学生の蒼生君を知っている。 高校受験までの2年間、同じ塾に通っていたからだ。 彼は平凡な私を覚えていないようだけれど、蒼生君は当時から目立っていた。 全国模試で毎回成績上位者に入るほどの秀才。きれいな顔と珍しい苗字。そして、当時の彼は、ニコリともしない、暗い表情で感じの悪い少年だった。 蒼生君が入社してきたとき、彼の印象のあまりの変わりように驚いた。 同姓同名の別人かと思ったほどだった。 でも、今日初めて、その理由がわかった。 彼はきっと、マリセラに会って変わったんだ。 それまでの自分を、全部変えたくなるような出会いだったんだ。 私は、もういない彼女を羨ましいと感じた。 一人の人間に、蒼生君に、人生を変えるような影響を与えた少女。
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