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1コ下のミキは、蒼生君に「ミキちゃん」と呼ばれるのを役得だと笑っていた。
ミキには彼氏がいるが、合コンや飲み会が好きで蒼生君ともよく飲みに行くらしい。
「私はさすがに飲みだけに留めてますけど、蒼生君は来る者拒まずですよぉ」
と、女子会のときに聞いた。
「でもトラブルになった話は聞かないし、なんだかんだで上手いんだと思いますよ、いろんな意味で」
そう言ってカラカラと笑うミキを放任している彼氏は、大物だと思う。
確かに、女性関係のトラブルは聞かない。でも、指導担当者である私は、蒼生君のせいで方々に頭を下げまくっているのだ。
領収書の金額が合わない、期日が過ぎても書類が返ってこない、今日中の仕事を頼んだのに、終わらないうちに退社してしまっている、etc……
後始末に追われる私の身にもなってほしい。
事務は穴だらけなのに、彼の評判が意外と悪くないことも、面白くない。どうせ、容姿にものを言わせて許されているのだろう。
「ごめんねぇ、今度ランチおごるからさ」
そう言って経理のお局様に、締め切られた先期の分の領収書の決済を頼んでいるのを見たことがある。
「しょうがないわねぇ」
と言いながらも、彼女はその後鼻歌など口ずさんで、いや鼻ずさんで、周囲を慄かせていた。
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