俺の好みを知れよ

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店に入ると、男が長い足を組んで座っているのが見えた。 店長が、さっきの手付け金の領収書を渡している。 「この度は、ご成約ありがとうございます。こちら、些少ではありますが……」 店長がウルファードのミニカーが入った箱を差し出していた。 「まだ、正式に決めてないよ。あくまでも手付けだ」 男が店長の後ろに立っていたヒカルをちらっと見る。 「小日向さんの営業次第だから」 「はい、もちろんでございます。……小日向さん! お客様のご相談に乗って」 店長は、ヒカルの腕を引っ張って男の向かい側に座らせた。 「お客様、こちらにご記入お願い致します」 小林が来店されたお客様に必ず書いてもらう用紙を持ってきた。 「個人情報は、うかつにもらさないことにしているから書かない」 「……さようでございますか」 小林は仕方なく用紙をさげたが、そのままテーブルの近く、店長の隣に立っていた。 「店長、仕事であまり時間が無いんだ」 男が店長に顔を向ける。 「はい、では本日詳しい見積もりだけでもお出しします」 客をどうしても成約まで持っていきたい店長の焦りが感じられていた。 「オプションとかの話を詰めたいんだが……」 男がヒカルに視線を移した。 「小日向さんに仕事へ向かう車の中でオプションの説明してもらっても構わない?」 「え!」 ヒカルは、椅子から飛び上がるほどに驚いていた。話を聞いていた小林も眉間に皺を刻む。
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