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「嫌いとか好きとか考えたことは無い。必要だから買うだけだ。女も同じ」
「え?」
「嫌いとか好きとかは関係ない。必要だから口説く」
大乗が身を乗り出し、ヒカルの顎に指で触れた。
「……やたらと触らないでください」
予想外に強く言うヒカルに大乗は、楽しそうに笑った。
「ははっ! いったい、いつなら、やたらって事にならないんだ?」
「し、親しくない人が触ったら、いつでも……やたらとって事になります」
「やたらと……か。親しくなればいいのか? 小日向さん、どうやったら親しくなれる?」
ヒカルの顎を持ったまま、顔を近づける大乗。
ーーー落ちつかなきゃ。この人は、からかって楽しむタイプの人だわ。焦らないように。
ヒカルは、動揺しないように気をつけて目の前にいる大乗を強く見返した。
「親しくなりたいと私が思わないと親しくなれません」
「……そうか、ごもっとも。ちょっと、停めてくれ」
車が静かに路肩に寄り停まった。
「呼ぶまで、外に出てくれ」
大乗の言う通りに、運転手は外へ出て行った。
「さあ、これで……小日向さんと俺の2人きり」
大乗はネクタイに手をやり、少しずつ緩めはじめながらヒカルを眺めていた。
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