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「何か勘違いしてないか?」
ニヤつく大乗。
「え?」
「新しい女に俺を教えたいとは言ったが、それが小日向さんだと誰が言った?」
大乗は、天井を指差す。
「今オプションを検討しているだけだろう? 違うか? 確かウルファードはルーフカラーがカスタムできたよな? あれオプション?」
質問しながら、大乗は自分が座っていたシートに腰を下ろした。
ゆっくりシートを倒す。
「……標準装備です」
ーーーなんなの! からかってばかり!
そりゃそうよ、大乗さんの新しい女? そんなのどうでもいいし。勘違いなんかしてないわよ! 私は……オプションを説明しにきただけ。
「標準なんだ。じゃあ、必要ないかな」
ヒカルは座りなおして、iPadをタッチし始めた。
「では、オススメのオプションですが……」早く話を進めようとするヒカル。
「ナビとか他のオプション、すべて任せる。オススメのをつけていいよ」
瞼を閉じる大乗。
「はあ……ではオプションをつけて詳しい見積もりをお出し致します。ご自宅にFAXはございますか? メールでもよろしければ……」
「FAXは、ない。メールで済ませたくない。朝イチで自宅に届けてくれないか? 小日向 ヒカルさん」
大乗は、瞼を開きシートを倒したままヒカルへ顔だけ向けた。
「……いや、本名は龍田〈タツダ〉ヒカルさん……でしたっけ?」
言ってから唇の端を上げる大乗は、まるでヒカルの全てを知っているかのようだった。
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