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終わりの始まり
赤を基調とした薄暗い廊下の両端に、ぼんやり明るいキャンドルが並べられている。
その灯の案内に従って、大小2つの影が進んでいく。
大きい方の影を作っている仮面をかぶった男は、なんとも卑しい目つきで隣を見つめていた。
その視線が妖しく厭らしく光るのは、店内に立ち込めるジャスミンの香のせいではない。
隣を歩く華奢な少年のせいである。
彼はどんなαの支配欲もを掻き立てる。
生意気そうにきつくつった猫のような2色の瞳はなんとも加虐心を煽り、うっすらと紅のさされた固く結ばれた唇は鳴かせてみたいと思うのに十分なほど恍惚で。
幼い相貌に、大人びた表情。そのギャップが危ない色香を醸し出している。
そして何より彼から放たれる強烈な香り。ヒートでもないのにここまで多数のαを惹きつける香りを放つ者は稀で、それが幾多ものαが彼と一夜の関係を望む原因だった。
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