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陽光を浴びた蜂蜜のような、きらびやかな肩までの金の髪、陶器のようにきめ細かな真っ白な肌。
聡明な瞳は海の底を映したような深い青を宿しており、その奥に覗く陰りもまた、魅力的だ。
中性的な顔立ちをしているが、その長身と声から、男性であることがわかる。
驚くほどに形の整った薄い唇はかすかに歪み、彫刻で掘られたかのような美しい微笑を浮かべた。
その落ち着いた色香に、不覚にもどきりとしてしまう。
「俺はアランという。君は?」
君は?と聞かれ、少年はなんと答えればいいのかわからなかった。
死人に名前などないし、もともとこの10年間弟以外に名で呼ばれることはなかったからだ。
「…死人に名乗る必要などありません。」
ぶっきらぼうな少年の回答に、アランと名乗った男性は目を丸くした。数秒の沈黙の後、彼はああ、と目を伏せる。
長い睫毛が影を落とし、深い青を隠した。
「生きている。俺が助けた。」
一瞬、言っている意味がわからずそうですかと頷きかけた。まあ死んでいる自分には関係ないかと。
しかし、よくよくその言葉を思い返してみると、何かおかしいことを聞いた気がして、少年はアランに向き直る。
「いま、なんて… 」
「君を、治療した。」
はっきりと、2度も言われれば理解できないはずがない。少年は絶望の色をその2色の瞳に宿した。
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