エピローグ

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かえってからかわれた方がマシだと思う。こんな反応は恥ずかしい。 「…じゃなくてっ!!あの日名前をもらった時、実はすごく嬉しかった。 ずっと、この瞳を、気持ち悪いって言われてきたから。」 「…宝石よりも美しいのに、心外だ。」 さらりと彼の蜂蜜色の髪がアルの首筋を掠めた。気づけば聡明な青い瞳がアルの瞳を覗いていて。 「そ、…そんなこと、ない、けど…。」 この甘過ぎる言葉にだけはいつまでも慣れなくて、嬉しいのにぶっきらぼうに返してしまう。恥ずかしくてアルは、下を向いた。 「あ、流れ星。」 頑なに下を向き続けていると、不意にアランがそう呟いた。 「え、どこ??」 反射的に上を向き、空の中に流れ星を探す。一瞬で流れるそれは、見つかるはずもないのだが。 「ここ。」 「んんっ///」 アランの言葉とともに、形の良い唇が降ってきた。 この時期に雪など降るわけないとわかっていながら、こういうときの彼のキスは、淡雪のようだといつも思う。 ふわりと優しく降り注いで、一瞬でなくなってしまう。 離れていった唇の向こう、見つけた流れ星にアルはそっと願った。 この幸せが溶けてなくなることは、ありませんようにと。
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