番外編お礼ss①「誓いのピアス」

2/11
1351人が本棚に入れています
本棚に追加
/171ページ
…このひと、本当にわかってない。 そんな大金、どこから出てくるんだという意味なのに。 「ごめん、なんでもない。 でも、ともかく全部高すぎ。娼館で働いてた時に貰った指輪もこんなに高くなかった。」 「…指輪?」 何か気に触ることでもあったのか、アランの声がワントーン低くなった。 「たまに気に入ってくれたαの人がくれたんだ。 名前が入ってて売り物にならなかったんだけど、入ってなかったら何百万とかで売れた…」 とりあえずそのまま続けていると、アランの表情はますます歪んでいく。 「…ごめん、娼館での話なんて、聞きたくないよね…。」 やってしまったと気づいた時には、もう遅い。自分の無神経さに腹が立つ。 嫌われてしまっただろうか…? 不安でいっぱいになりながらアランを見上げると、途端に腕を引き寄せられ、正面から強く抱きしめられた。 「アル… 」 低い美声が耳元で囁く。 大好きな香りとたくましく優しい腕。 全ての要素が鼓動を早くして、苦しいくらいにドキドキする。 この人はずるい。 中性的な顔立ちは人並みはずれて美しく、顔を見ているだけで好きすぎて心臓がもたないのに、その声も、甘い香も、抱きしめる温もりも、全てが好きだ。 運命の番でなければ、俺なんかと一緒にいてくれることはないんだろうな…。 いつも、捨てられたらどうしようという不安がつきまとって離れない。 俺はもう彼なしでは生きられないから。 あれ、そういえば俺はさっきから何を気にしていたんだっけ…? アランと見つめ合ううちに、身体が火照ってわからなくなってしまった。 思い出そうと首をひねるが、なかなか思い出せない。 「…ベッドに行こうか。」 ふと、アランがそう言った。 「えっ、もう寝るの?まだご飯食べてないけど…。」 「夕飯は後だ。」 「寝た後に夕飯?起きれる自信なっ…んんっ…///」 いきなり溺れるように息ができなくなり、口内が溢れんばかりの甘やかな香に包まれた。
/171ページ

最初のコメントを投稿しよう!