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…このひと、本当にわかってない。
そんな大金、どこから出てくるんだという意味なのに。
「ごめん、なんでもない。
でも、ともかく全部高すぎ。娼館で働いてた時に貰った指輪もこんなに高くなかった。」
「…指輪?」
何か気に触ることでもあったのか、アランの声がワントーン低くなった。
「たまに気に入ってくれたαの人がくれたんだ。
名前が入ってて売り物にならなかったんだけど、入ってなかったら何百万とかで売れた…」
とりあえずそのまま続けていると、アランの表情はますます歪んでいく。
「…ごめん、娼館での話なんて、聞きたくないよね…。」
やってしまったと気づいた時には、もう遅い。自分の無神経さに腹が立つ。
嫌われてしまっただろうか…?
不安でいっぱいになりながらアランを見上げると、途端に腕を引き寄せられ、正面から強く抱きしめられた。
「アル… 」
低い美声が耳元で囁く。
大好きな香りとたくましく優しい腕。
全ての要素が鼓動を早くして、苦しいくらいにドキドキする。
この人はずるい。
中性的な顔立ちは人並みはずれて美しく、顔を見ているだけで好きすぎて心臓がもたないのに、その声も、甘い香も、抱きしめる温もりも、全てが好きだ。
運命の番でなければ、俺なんかと一緒にいてくれることはないんだろうな…。
いつも、捨てられたらどうしようという不安がつきまとって離れない。
俺はもう彼なしでは生きられないから。
あれ、そういえば俺はさっきから何を気にしていたんだっけ…?
アランと見つめ合ううちに、身体が火照ってわからなくなってしまった。
思い出そうと首をひねるが、なかなか思い出せない。
「…ベッドに行こうか。」
ふと、アランがそう言った。
「えっ、もう寝るの?まだご飯食べてないけど…。」
「夕飯は後だ。」
「寝た後に夕飯?起きれる自信なっ…んんっ…///」
いきなり溺れるように息ができなくなり、口内が溢れんばかりの甘やかな香に包まれた。
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