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「な、なに?」
「説明なしに悪かった。ホールの位置がずれないように油性ペンで印をつけたんだ。」
あの湿った感触は油性ペンか。なるほど。
…くすぐったくて少し苦手だ。
「…もう片耳もやる?」
恐る恐る聞いてみる。
「…?ああ、同じように。」
もう片方も同じようにピンで止められて、きゅっ、と耳たぶをペン先が這った。
くすぐったくて漏れそうな声を今度はぐっと歯を食いしばって堪える。
それからアルコールで消毒をされて、彼がピアッサーを持ってきて。
その仕草ひとつひとつに目が釘付けになってしまう。なんとなく医者っぽくて。
どんな職業であれ、自分と違うことをしている人の姿は格好いい。
「…?どうした?」
不思議そうに聞く彼に、なんと答えていいのかわからなかった。
ピアッサーを持つ姿がやけにかっこよくて思わず見とれてしまったのだ、なんて言えない。
「…なんでもない。」
気まずさに目をそらす。
「体調が悪いなら言って欲しい。本当に大丈夫か?」
心配そうにじっと目を覗かれる。やめて欲しい。そんな心配そうに見られたら、本当のことを言うしかないじゃないか。
「…かっこいいなって、思って…。今更だけど…。」
恥ずかしくて言葉がどんどん尻すぼみになる。
突然、アランが口を押さえて目を逸らした。頬が真っ赤だ。
「え、なに?どうしたの?」
心配になって問いかける。
「…アル、あんまりそう言うこと言わないから。」
ぶっきらぼうな声音とともに、なかなか可愛らしい答えが返ってきた。
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