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「お兄さん、気持ちよかったです。また、指名してくれますか?」
少年は彼の信用を勝ち取るため、下手に出た。本当は、前戯もなく捻り混んで4度も出すなど、ただの痛みを伴う行為でしかなかったが。
「ああ、気が向いたらな。」
男は満更でもないように笑う。
「おやすみの前に、子守唄を歌わせていただけますか?」
「…下手だったら殺すぞ。」
殺す、なんて、簡単に言ってくれる。同じ人間という生き物で、交配も可能でありながら、目の前の男と自分はどこで差が出たのだろう。
少年はそんな思いを必死で隠し、すうっと息を吸い込む。
よくとおる澄んだ高音が、美しい旋律を奏でる。歌詞は無く、風と同化して入ってくるような、聞いていてなんとも心地の良い声音。
男は1分と経たずに寝息を立て始めた。行為でのたかぶりのせいか、余程疲れていたのだろう。少年は歌をやめ、静かに彼の首に手をかける。
「さようなら。」
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