終わりの始まり

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2つの親指が、男の気道を的確に塞いだ。 「ぐはっ…ぅっ…」 数十秒で男はもがき始め、苦しみの声を上げながら失禁した。 少年は男を殺すつもりだった。彼は男が抵抗しても、容易く抑えこめる力を持っている。しかし。 「ごめん、レン。」 少年はそう言って、ショックで意識を失った男から手を離した。そして男の腕の爪痕の傷を、優しく指でなぞっていく。 息はある。もしかしたら多少の麻痺が残るかもしれないが、それも軽いものだろう。 弟の右手には薬指が一本足りない。だから数日前弟を行為の最中に殺したのは、この男で間違いない。 弟の命を奪われた復讐として、少年は男を殺そうとした。けれど、できなかった。 だってどうだろう。 彼を殺したところで弟は帰ってこない。そしてもしかしたら彼にも家族がいて、彼の死を悲しむ人がいるかもしれないのだ。 そんな思考が脳をよぎれば、もうダメだった。殺すと決めたら実行しろと、何度も親に教えられてきたのに。 次の日の朝、少年はおとなしく罰を受けた。
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