終わりの始まり

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この国において、第2性による階級は絶対だ。 未遂とはいえ、Ωがαに手をかけた罪は、死をもってしても償えない。だから少年に課されたのは、極刑。 そのウイルスを直接注射されれば、身体中から血を吹き苦しみながら、じっくり3日間かけて死ぬという。 恐ろしい病の特効薬は、もちろんある。あるが、Ωであるこの少年に使うことは禁じられている。だからそれは彼が3日かけて苦しみもがきながら死ぬことを意味するのだ。 それでいい、と少年は思った。 殺し屋の両親に育てられ、裏の社会で生きてきた。 両親の死後は兄弟2人、娼館に売られた。 もちろん少年1人ならば逃げ出すこともできたが、弟は右手の薬指と、左足の膝から下がなく、そんな弟を放っておくことはできなかった。 弟がいなくなり、復讐の機会も自らの手で逃した今、自分にもう生きる価値などない。 そう、これでいいのだ。どんなに苦しくても、あと数日で、楽になれる。それなら今まで来た道の方がずっと地獄だった。 身体の表面が熱を持ち始め、次第に痛みを帯びる。 少年に注射を施した男女は、店の路地裏、ゴミ捨て場に彼を放り投げた。 自分に降り注ぐ冷たい液体がなんなのか、目隠しをされているからわからない。 しかし耳をすませばぽつぽつという音が聞こえてきて、今雨が降っているのだと理解する。 臭くて、辛くて、降り注ぐ雨は冷たくて、このまま自ら死ぬことができたらいいのに、拘束された身体はもがくことさえ許されない。 意識を手放せればどんなに楽だったか。後孔に挿れられた玩具のせいで、手放そうとした意識も引き戻されるのだった。
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