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ーーーお父様は、どうしていつも私に厳しいんだろう。憎んでいるかのように私には笑いかけてもくれない。
話も聞いてくれない。お父様は、私を自分の思い通りにしてる。ただ、会社の経営の為に優秀な跡取りが欲しかっただけだ。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
フラついたヒカルの体を支えてくれた中本。
「中本、私……結婚なんか……まだしたくないのに」
つい、ヒカルは本音を漏らしていた。うっすらと浮かぶ涙のせいで、視界がゆがんでゆく。
「中本、お父様は、私が30歳にもなって結婚出来ないような娘で、さぞ恥ずかしいんでしょうね?」
「そんなことはございません。お嬢様の幸せが長く続くようにと……いつもそればかりを考えておいでです。どうしたら、お嬢様が安心して生活していけるかと日々案じておられます」
ヒカルの体を支える中本は、ゆっくり歩きヒカルをソファに座らせた。
「そんな訳ないわ。私の幸せを考えてるなら、どうして自由にさせてくれないの? なんで見合いなんか……お父様は、会社の経営の事しか考えてないわ。わかるの……」
ヒカルの頬に涙が流れて落ちた。
それを急いで手の指先で拭ったヒカル。
「私のことを考えてる? 中本……お父様は、『私を利用することしか考えていない』の間違いよ!」
もう一度涙を拭い中本から目をそらして立ち上がると、ヒカルはリビングを出て行った。
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