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第2章
季節はすっかりと寒くなっていた。
今年は全国的に寒波が激しく雪が降ることが珍しくなくなっていた。
アパートのコタツで母親と晩ごはんを食べていると母親が言いにくそうに口を開いた。
『ねぇ翔太。今月のバイト代はどう?』
僕はあの後、あの技を使い定期的にお小遣い稼ぎを続けていた。
中には数万円をくれるおじさんもいた。
母親には知人の仕事を手伝っている事にしていた。
『今月は30万くらいかな。』
『へぇー。頑張ってるね。』
『まあね。家賃や食費を考えるとギリギリだよ。』
母親は一向に働こうとせず、僕が養う形となっていた。
『今度ね、友達と出掛けるんだけど、少し貸してもらえないかな。』
『友達?』
僕は友達という言葉に違和感を覚えた。
母親に友人などいた事がなかったからだ。
僕の胸に嫌な予感がよぎった。
そして、その予感は的中することになった。
ある日の朝、母親はいつもよりうんと濃い化粧を施していた。
タンスから数少ない服を寝室に並べて眉をひそめている。
『出掛けるの?』
食卓から僕が声を掛けると『え、うん。ちょっと友達と食事。』と言った。
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