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私のハートを君に
「バレンタインデーは仕事で会えないよ」
「そぉ、わかったわ」
彼女は怪しく笑っていた。
僕の彼女はSなところがあり、時折僕を困らせていたが
その日は何もなく、すんなり家に帰った。
バレンタインデー当日。
いつも通り仕事に行く準備をしていると
「ピンポーン」
朝から宅配で荷物が届いた。
包みを開けてみると、かわいいハートの形をした箱が
入っており、手紙が添えられていた。
「私のハートを食べなさい」
手紙にはそれだけ書いてあり、すぐに彼女からの
チョコレートだと分かり箱を開けてみると、そこには
身近ではあるが見慣れないどす黒いものがはいっていて
「これって?」
医療ドラマや理科室なんかでお馴染みの…
「し、心臓!?」
僕は家を飛び出し彼女の家に走った。
結びかけのネクタイは、ヒーローみたいに風になびいて
カッコ悪かったがそんなことは関係ない。
こんなにも僕を想っていてくれた彼女より、仕事を選んでしまった自分を後悔した。
彼女のアパートに着くと、僕はすぐに505号室に向かい扉を
叩いた。
「頼む!返事をしてくれ!」
…返事はない。
ドアノブに手をやると鍵はかかっていなかった。
ドアを開け中に入ると…
「いらっしゃい、早かったわね。」
「なっ、え?」
そこにはこたつに入ってテレビを観ながらみかんを食べている、元気な彼女がいた。
聞けばあのリアルな心臓は、知り合いのB.Jとかいう人に作ってもらったらしい。
「冗談が過ぎるだろ!マジで心配したんだぞ??」
少し切れ気味に言った僕に、彼女は
「だって私、あなたのその慌てた顔が大好きなの」
怪しく笑う彼女の顔はとても美しく、いつも僕は許してしまう…
「とりあえず抱きしめてもいいですか?」
だまって両手を広げた彼女を、僕は思いっきり抱きしめた。
こたつに入っていたからなのか、彼女はとても温かく…
僕の心臓は今でも爆音を響かせていた。
~終わり~
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