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南の果ての村
「氷河の下には、悪魔が封印されているの」
グレイシアは、旅の男を前にそう語りはじめた。
「悪魔がどんな姿をしているのかは、誰も知らない。でも、この村にはずっと昔から言い伝えられているの。氷河の氷が溶けたとき、悪魔の封印も解ける。だから、この村の私たちは、あの氷河を守らなければならない」
男は、薄水色の瞳でじっとグレイシアを見つめ、ときおり小さく頷きながら、少女の話を聞いていた。
「昔、ずっと昔、大地の神は悪魔と闘った。でも悪魔の力は強く、大地に生きるものはほとんど死んでしまった。神は最後の手段として、悪魔を氷河の下に追い込み、世界を雪と氷で閉ざした。悪魔との闘いで生き長らえた動物も、今度はその寒さで種と数を減らした。その中を生き残ったものは、この地に残り、永遠にこの氷河が溶けることのないよう、守るという使命を与えられた」
この村ではそれを、「260万年の呪い」と呼んでいる。そう説明しようとしたが、260万、という大きな数字を表す言葉がわからない。
グレイシアはゼロの数を心の中で数えながら、テーブルの上の紙に、2600000 と書いた。
「このくらい、昔の話」
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