北の大地

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 次に気がついたとき、ネイサンは清潔な白いベッドに寝かされていた。見回すと壁の一面はガラス張りの、小さな白い部屋だった。  そこで彼が教えられたことは、湖を中心に、半径250kmの生物はほぼ死滅したという残酷な事実だった。  そこのバスルームで初めて、彼は変わり果てた自分の姿を見た。  体毛は全て抜け落ち、異星人のように目がギョロリと剥き出して見えた。歯も何本か抜け、グラグラになっていた残りの歯も、その後の1年で半分に減った。日に焼けた肌は乾燥してひび割れ、ところどころ赤くただれていた。  こんな姿のものを「強制退避地区」で発見した調査員は、さぞ驚いただろう。  ネイサンは、「死の街の唯一の生き残り」として、何年もその施設で生活を管理されることになった。  調査のために、彼の身体は隅々まで調べられた。あらゆる組織を採取され、生活は24時間監視された。感染防止のため、彼に接するものは全員、例の白い防護服を身につけており、顔も見えなかった。 「それで、あなたの街を襲った悪魔の正体はわかったの?」 「わかったのか、わからなかったのか、教えてはもらえなかったんだよ。彼らは毎日、いやというほど私に質問をしたくせに、私の聞きたいことにはほとんど答えてくれなかった。施設を出されるその日まで、結局私には何もわからないままだった」     
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