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施設に入れられてから、何年たったのかもわからない。全てを調べ尽くし、ネイサンから何かが伝染することがないと判断されたのだろう。彼は何の前触れもなく施設を放り出された。
ネイサンが渇望したのは、情報だった。
湖の周りで何が起きたのか。封印されていた悪魔とはなんだったのか。
被害者の数は。被害の範囲は。
それを防ぐ方法はなかったのか。
どうして自分一人だけが助かったのか。
ネイサンは旅に出た。
情報を集め、北の大地に何があったのかを知るために。
世界で起こっていることを、その目で見るために。
答えを自分で見つけるために。
「答えは、見つかったの?」
グレイシアの問いに、ネイサンは優しく微笑んだ。
「半々だな。わかったものと、わからないものと。しかもその答えが、正しいかどうかはわからない。人の噂や報道を、私なりに分析した結果だから。答え合わせができる日は、私が生きているうちには来ないのかもしれないね」
部屋に灯したランタンの光が、隙間風に揺れる。
隣に座っていた村長は、ネイサンの話の内容をほとんどわかっていないだろう。
この村にとっても、大切な話をしているのに……
グレイシアは煙管で白い煙をふかす村長を、物言いたげにじっと見つめた。
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