南の果ての村

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 グレイシアが大きな漆黒の目を上げると、男はわかったというように、大きくうなずいた。  まだ子どものグレイシアがここに呼ばれ、旅の男にこの村の伝説を語るように言われたのには理由がある。  男はこの地域の言葉を、あまり理解しないのだ。  グレイシアは知っていた。この世界には、いくつかの言語がある。グレイシアの住む、南の果ての村とその付近で話される言葉と、他の地域で話される言葉は違う。  男は何年も旅を続けているらしく、生活に必要な少しの言葉は知っているが、伝説を理解できるほどの語彙がない。  そしてこの南の果ての村において、彼の言語である「北の大地の言葉」に最も堪能なのは、まだ12歳のグレイシアなのだ。  男はこの村にたどり着くと、まず村長を訪ね、この村に伝わる伝説を聞かせてほしいと頼んだ。彼が身振り手振りとわずかな南の単語を駆使してそう伝えると、そのイントネーションや瞳の色で北の大地の民だと判断した村長は、人をやってグレイシアを呼んだのだった。 「ありがとう。とても、よくわかったよ。グレイシア、君はとても頭がいいんだね。君がこの村にいてくれて、助かった」     
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