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男は北の大地の言葉で、ゆっくりとグレイシアに礼を言った。優しく細めた目は、この村の氷河と同じ色だ。悪魔を封じ込めた、永遠の氷。260万年前から村を守り続ける、神の慈悲と呪い。
「君にお礼をしたいけれど……チョコレートは好きかい?」
男はそう言って、古びてボロボロのバックパックに手を入れた。
「もちろんチョコレートは好きだけど」
グレイシアは彼の動きを小さな手のひらで制した。
「お礼なら、それよりもあなたの話を聞かせてほしい。あなたのことと、あなたのしてきた旅のこと」
黒い瞳が、男の顔を覗き込む。
「どうしてあなたには、まつげがないの?」
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