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車で走っていたなら、構わず通り過ぎていただろう。すでにいくつもの町や村で、累々たる死骸を見てきたのだ。
ネイサンは食料を調達する目的で町に入った。スーパーには缶詰があるはずだ。この数日で、食べても腹を下さないのは瓶詰か缶詰の中身だけだと学んでいた。
初めて訪れた町で、食料品店を探していたネイサンは、ふと視界の端に動くものを捉えた。
まさかと思って目を向けると、そこには全身を白い布で覆った人型の何かが立っていた。しばらく見ていても動かないので、ネイサンは気のせいかと思って歩きはじめた。するとその人型の白いものは突然悲鳴をあげ、ガサガサと音を立てて走り去った。
目覚めて以来、初めて生きているものに出会えたネイサンは狂喜した。もしかして、生き残ったのは世界中で自分一人かと思っていたのだ。
暗い宇宙に放り込まれたような、凄まじい孤独と戦っていたネイサンは、全力で走り出した。
白いものを追って角を曲がった彼は、広場に同じような白い人達が数人集まっているのを見た。ネイサンは歓喜のあまり大声で叫びながら彼らに走り寄った。
そして、銃で撃たれた。
「ひどい! 撃たれたの?」
「麻酔銃だったみたいだよ。熊か何かに遭遇したときのために用意していたものらしい。だからほら、今でも生きてる」
ネイサンは笑って、両腕を広げてみせた。笑うと、彼の口の中には歯がまばらにしかないのが見える。
「仕方がなかったと思うよ。彼らが私を発見したとき、私はこんな姿で、しかも服もボロボロでシャワーも浴びていなくて、まぁひどい有り様だったからね」
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