毒の杯 (黒)

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「お二人の前途に乾杯!」 グラスの澄んだ音、響く拍手。 続いてゆく祝辞・・・。 なぁにが「お二人の前途」だ、 部長もヌケヌケ言いやがる。 つい最近まで抱いてた女の披露宴、 部下の新郎を褒め殺した挙げ句「乾杯」 明日からスキあらば苛める・・・ いや、無理だな、新郎は重役の甥。 むしろ可愛がって出世の糸口にする、 部長はそう言う男さ。 俺みたいにたった1度きり、酔った弾みに “花嫁“に御相手をしてもらった “目立たない、憐れな男“じゃない・・・ 新郎新婦がローソクをもってテーブルへ。 「オメデトウ」 「ありがとうございます」 この女もヌケヌケさ、 まあ、俺なんかカウントすらして ないんだろうよ・・・ 怖い笑顔だねぇ・・・ 切り刻んで、やりたいくらいね・・・。   笑顔の下で       男は舌打ちをした。
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