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全ての相手がそうなるわけではない。人が相手だってそうだ。ネコとだって相性がある。むしろ種が異なるからこそ相性が大事なんじゃないか?
人がネコと一緒にいて安らげるように、ネコも人と一緒にいることに安心できなければ共に暮らせないと、僕は思う。僕にとってミイは安らげる相手だった。けれど、ミイにとっては?もしかしたら僕はミイを幸せにできなかったからミイは姿を消したのかも知れない…
不意に黙り込む僕を静かに見守っていたおたまが、口を開いた。
「できるものならずっとアンタのところで暮らしたかった。けどね、アンタはいつかきっと気づいてしまうと思ったんだ。あたしが普通のネコじゃないことを」
まるで僕の心を読んだみたいじゃないか。猫又はそんなこともできるのか。
「何となくアンタの考えてることが分かっちまう。きっと逆もあり得る。それほどにあたしたちは波長が合っているんだと思う」
おたまはじっと僕を見つめる。
「思考が読めるとか心が読めるとか、そういうことじゃないんだよ。そうさね、何となく伝わってくる。そうとしか言いようがない」
とにかく、おたまには僕の気持ちが伝わるらしい。
「あんたはもう立派な大人になった。だからこうして言葉を交わしても分別があるから大丈夫だ。けどね、幼い子に同じことが言えると思うかい?」
幼い僕だったら、猫又を見てどう思っただろう。きっと受け入れる。今みたいに戸惑うことなく、素直にそのまま受け入れてしまう。
「きっと素直に受け入れてしまったろうよ。あたしはそれが怖かったんだ。怪異を容易く受け入れて、あんたの日常が変わってしまうことを恐れたんだ」
そうだったのか。
ミイは僕のために去ったのだ。僕の日常を守るために。僕が怪異に馴染んで、周りから浮いてしまわないように。
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