ネコの…

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「ところで」 おたまが猫又だと知ってからずっと抱いていた疑問を口にしてみる。 「おたまは猫又だって言うけど、猫又って普通のネコがなるものなの?それとも、猫又っていうのは初めからそういう生き物?」 「そうさね、諸説あるようだけど、あたしの場合はネコとして長く生きた末に猫又に化けたクチさね」 「長くって、どのくらい?」 「そうさね、人間の時間で数えると30年は生きたかね」 30年!ネコの平均寿命は15年ほどと聞くから、その倍の年月を生きたのだ。並大抵ではない。 「今からかれこれ150年ほど前のことだけどね」 150年前?ということは、明治時代を生きたネコということ?? 「猫又になって、そのまま生き続けてるってこと?」 「そうさね、あたしの場合はそうだね」 そうさね、というのはおたまの口癖らしい。うーんと、とか、えーっと、とか、そんか感じらしい。 「ときに普通のネコとして人間の家に転がり込むこともあったさ。かれこれ30年ほど前に住んだ家には小さな男の子がいてね、あたしのことを大層かわいがってくれたんだよ」 30年前か。僕が5歳の頃だ。そう言えば、そんな頃に僕の家にもネコがいた。ちょうどこんな模様の、おたまのような… 「え!?」 僕は物凄い発見をしてしまったかも知れない。 いや、まさか、そんな。 いやはやしかし、そんなまさかが今、目の前にいる猫又という存在なワケで。それを思うと、このとんでもない気付きもあり得るのだ。 「今、不意に思い出したことがある。昔、僕がまだ幼い頃に実家に三毛猫がいたんだ。ちょうどおたまちゃんのような模様のね。その子はミイちゃんという名前があって、毛並みの美しい自慢の家族だったんだ」 おたまのまだら模様がミイと重なり、切なくなる。彼女にはもう二度と会えない。会いたくても、もう会えないのだ…
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