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じっと僕の目を見つめる。
「あたしは猫又だよ」
そう、おたまは猫又なのだ。普通のネコではない。いつの間にか僕はすっかり納得してしまっていた。猫又が存在すること、おたまが猫又であることを。
「アンタ、さっきのあたしの話しを聞いていたかい?30年ほど前には人様の家に住み着いていたんだ」
そうだった。だからミイのことを思い出したんじゃないか。
「ミイちゃん…」
「そうさ、あたしはかつてミイちゃんと呼ばれは三毛猫さ」
無意識に僕はおたまを抱き上げていた。かつてそうしたように、そっと両の腕で包むように抱く。するとおたまはぐるぐると喉を鳴らした。かつてミイがそうしたように。
「懐かしいねぇ。あたしもアンタのことが大好きだったんだよ。けどね、そう何年もいたんじゃ猫又だってバレちまう。そうしたらお互いにまずいことになるからね。潮時を見極めたんだ」
ミイが姿を消したのは、僕が小学校に上がった日だった。ピカピカのランドセル、なんて言うとベタな表現だけれど、真新しいランドセルはピカピカしていた。僕は得意になってミイにその晴れ姿を見せた。眩しそうに目を細めるミイの姿に、きっとミイも入学おめでとうと言ってくれているんだ
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